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「赤めだか」

  • 2011/11/01

立川談春「赤めだか」を読了する。インターネットの古本屋で安く購入した本で、あまりに安過ぎるのでぼろぼろだったら嫌だなあと思っていたのだが、これがとても美しい本だった。ありがたい。

この本は立川談春の前座時代を描いたエッセイだ。最近落語に興味を持ち始めた私だか、何かを好きになるとそれを生業とする方の人生が気になるたちで、例えばマンガに惚れ込むとそのマンガ家の人生を詳しく知りたくなる。そういった流れで読み始めたのだが、これがあまりに面白くて久しぶりに「超速読」してしまい、「ああ、なんて勿体ないことをしたのだ」ととても悔やんでいる。3時間程度で読み終えたのは昨日の夜中なんだけど、未だにあの本の中にあった面白さを反芻している。

これは読んだ方ならわかってもらえると思うが、文章がとても読みやすい。わかりやすい。すっと身体に入って来る。文章には人柄が出ると常々思っているので、きっとこの方は相手のことを考えて行動できる方なのだと思う(って知らないけど)。それから厳しい人だとも思う。読みやすいように何度も何度も厳しく書き直しただろうか。そしてなにより気取っていない。そこがすごい。かー、かっこいい。きゃー。というのは私の心の声です。この本の中には、落語が好きになった少年が大好きな落語家に入門し、そこからの苦悩、日々の努力、挫折が静かに描かれている。中でも胸にきたのは、「立川志らく」への嫉妬と尊敬を書いた部分で、この苦悩を共感できずにいられるかとも思ったし、そこに言葉を挟んだ立川談志のアドバイスがまたすごい。

私は今までいい落語の聞き手ではなかったので、立川談志の落語のすごさを知らない(タレントとしての面白さはなんとなく知っている。だってそうだよね)。でもこの本を読んで立川談志という破天荒な風雲児が何故たくさんの人に愛されたかわかるような気がした。これから談志の落語を聞いてみたい、たくさん聞いてみたいという気持ちでいっぱいだ。

落語には歴史がある。思想もプライドもある。そんな世界での修行は想像以上に厳しいだろうな。こんなはずじゃなかったとやめて行く人もとても多いはずだ。だからこその魅力がきっとあるんだと思う。厳しさに憧れる人の気持ちはなんとなくわかる。その厳しさの中で発生する感情の揺らぎこそ人間の業であり、それこそが落語なのだと談志は言っている(ような気がする)。

読んでいる間ずっと懐かしい感覚にとらわれていて、読み終えた瞬間それが森田芳光監督の「の・ようなもの」を身体が思い出していたのだと気がついた。大学時代に観てとてもショックを受けた映画であり、それ以降「好きな映画は」という問いに「の・ようなものです」と答えていたぐらい自分にぴったり合った映画だった。前座修行中の若者たちを描いた映画で、そこに流れる「普通さ/地味さ」が当時の私にはとても衝撃的だった。映画とはトム・クルーズやジュリア・ロバーツでなければいけないと思っていたような部分があり、だから映画はあまり観ないで大学生になった。自分に合わなかったのである。「の・ようなもの」のようにダサい人が主人公であることにある意味大きな希望を見いだした私はその後さらに地味な映画を探すようになる。つまりは映画が好きになったのだ。どんだけネクラなんだよと自分につっこみを入れつつ、あの映画で描かれていた彼らと「赤めだか」に出て来る談春、談々、関西、志らくはほぼ同じなのだ。拭っても拭いきれないかっこわるさやダサさに私は心から共感する。

で、談春さんの落語を聴きにいく予定なので私はとても楽しみなのです。

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