旅の覚え書き/名古屋
- 2013/04/29
22日
朝起きて荷造り。
かばんが閉まらない。
二回り大きいスーツケースで来ればよかったかと後悔しながら何とか詰める詰める。
暴力的な力で何とかする。
お昼は宮沢さん、演出助手の上村聡くん、山本健介くん、今野裕一郎くんの5人で梅田のアジア料理屋。
笑ってのんびり過ごす。
山本くんが面白い。
私の弟に似ている。いろんな意味で。
皆と一旦別れて、幼なじみのSちゃんと再び会う。
Sちゃんとは離れて暮らしている分、お互い会える時間があれば会って話す。
特にたいした話はしないのだけど。
夜、名古屋へ向かう。
ホテルにチェックインして、かばんを開けたら中身がどさーっと溢れて来た。
はち切れずに、よくぞがんばった。
23日
午前中、どこか一人で散歩でもしようかと思ったけど、
夜に本番が控えているかと思うと出かけられない。
もし怪我したり迷子になったり携帯の電源がなくなったりしてしまったらどうしようと、
ものすごく臆病なのだ。
とにかくお昼ご飯を食べようと外に出て、
結局コンビニでいつもの食料を購入しホテルに戻った。
今回名古屋名物、ひつまぶし、味噌煮込みうどん、手羽先、あんこトースト、シノワロールは、すっぱりあきらめた。
胃が荒れたら怖いから。
どんだけー。
というわけで、ホテルでストレッチをしたり本を読んだりして、小屋入りの時間。
※
名古屋の劇場、アートピアホールもとても広くて気持ちのいい劇場だった。
本番は、やはり緊張。
人生初の名古屋公演、場所が変われば気持ちも変わる。
ドキドキした。
ちょっとクラクラもした。
でも、お客様の拍手が温かく、とてもとてもとても嬉しかった。
私は幸せ者だとつくづく思った。
夜、スタッフの皆さんと打ち上げ。
出演者のみなさんともいろいろお話をしたり、演出助手の山本くんを眺めたり、楽しい時間だった。
いつもお世話になっているスタッフの皆さんとももっといろいろ話せばよかった。
酔っぱらってホテルへ。
24日
朝起きたら、ゴミが。
酔っぱらって帰ってきてどうやらお菓子を食べたらしい、その残骸。
あー、やるね、たまにやるね。
もう反省せず。
外は大雨。
風呂で本を読む。
共演者の戌井昭人さんはサウナが好きだそうで、
旅公演先でも一人でサウナに行くと言っていたが、
私はとにかく湯船が好きで、
時間と体力があれば1時間ぐらい入っていたいクチだ。
その時間の中で雑誌を読んだり漫画を読んだり水を飲んだりアイスを食べたりする。
まあ、暇だし、湯船。
せっかくだから豊かな時間にしたいのだ。
で、ブルボン小林「マンガホニャララ」(大阪の本屋で買った)、向田邦子「霊長類ヒト科動物図鑑」(家から持って来た)、雑誌クロワッサン(名古屋のキオスクで買った)を持ち込み、読む。
ああ、素晴らしい。
湯船万歳。
しかし…
「嗚呼、ここに風呂のふたがあれば…ふたに本を置きながら読書ができるのに…」
ええ、ひどく貧乏臭い願望だとは百も承知で。
そして、そんなホテルは、ないよね。
※
小屋入り。
名古屋は2ステージで終わり。
寂しい。
お客様の笑い声が一段と大きく、幸せな回だった。感謝しかない。
カーテンコールではまた泣きそうになるが、一人で泣いていたらバカみたいじゃないかと堪える。
名古屋が終わってしまい、
あと3ステージを残すのみ。
岡田利規さんの小説の題名を少し借りるとするならば、
いよいよ、「私に許された特別な時間の終わり」が近づいている。
ホテルに戻り、夜中の1時半、名古屋の街を一人で歩いてみた。
人影はほとんどなかったが、
一人トレンチコートを着た私よりずいぶん若いであろうOLさんとすれ違い、目が合う。
彼女は今からどこに行くのだろうか?
パチンコ屋のネオン、サークルKの看板、面白い形のビル、チェーン店の居酒屋、マクドナルド。
この街を私は知らない。
しかし、ここに生活が仕事が人生がある。
そのことを考えながらとにかく寒い名古屋を歩いた。
名古屋公演のご褒美にハーゲンダッツを買いに行ったのが当初の目的であったが、
寒すぎて断念。
「何故私はこんな寒い風が吹く夜中ににアイスを求めて歩き回っているのか」
答えは全て風の中にある。
ディランもそう言っている。
…こんなどうしようもないことで持ち出されてはかなわないだろう、ディラン。
25日
午前中、名古屋観光をしようとも考えたが、
身体がだるく、
このまま帰ろうと決めた。
お土産を購入。
優柔不断なので迷う迷う。
「何だっていいじゃない」というマインドAと、
「せっかくだから美味しいものを」というマインドBと、
「味見できないのにどうやって美味しいものを判断するんだよ」というマインドCとが拮抗。
一発で決められる人間に心底憧れる。
新幹線のホームできしめんを食べた。
安いし、美味しい。
初・名物料理。
大阪ではお好み焼きもたこ焼きも食べなかったしなあ。
新横浜まで、ぼんやりしていた。
本も読まず、ただただ風景を見たり。
生きているといろんなことがあるのだなと考えていた。
※
新横浜に到着し、
身体が疲れていたので、
飛び込みで中国整体に入る。
果たしてそれは勝ったのか負けたのかわからないが、しかし大きな試合だったのは間違いない。
マッサージ師(女性)の方がとんでもない怪力の持ち主だったのだ。
とにかく痛い。
押せば激痛、骨が折れるかと思い、何度も叫び声をあげる。
「痛いです!」
と言うと、
「ヨワクね」
と力を落とすのだが、しばらくするとまたマックスに戻ってしまう。
また「あー!痛いです!」の繰り返し。
心地よさを求めて来たのに何故こんな仕打ちを…
と、恨み節で頭がいっぱいになる。
そもそも飛び込みマッサージは、賭けである。
賭けに負けたと思うしかないのだ。
そしてまたもや、
「アナタ、気が足りないね」
と言われる。
中国整体に行くと百発百中で言われる、「気が足りない」。
過去「アナタ気欠症ネ」と言われて5万円のマッサージクーポンを買わされそうになったこともあった。
気で満ちたい。
どうしたらいいのだろうか。
北九州編に続く。