「赤めだか」
- 2011/11/01
■立川談春「赤めだか」を読了する。インターネットの古本屋で安く購入した本で、あまりに安過ぎるのでぼろぼろだったら嫌だなあと思っていたのだが、これがとても美しい本だった。ありがたい。
■この本は立川談春の前座時代を描いたエッセイだ。最近落語に興味を持ち始めた私だか、何かを好きになるとそれを生業とする方の人生が気になるたちで、例えばマンガに惚れ込むとそのマンガ家の人生を詳しく知りたくなる。そういった流れで読み始めたのだが、これがあまりに面白くて久しぶりに「超速読」してしまい、「ああ、なんて勿体ないことをしたのだ」ととても悔やんでいる。3時間程度で読み終えたのは昨日の夜中なんだけど、未だにあの本の中にあった面白さを反芻している。
■これは読んだ方ならわかってもらえると思うが、文章がとても読みやすい。わかりやすい。すっと身体に入って来る。文章には人柄が出ると常々思っているので、きっとこの方は相手のことを考えて行動できる方なのだと思う(って知らないけど)。それから厳しい人だとも思う。読みやすいように何度も何度も厳しく書き直しただろうか。そしてなにより気取っていない。そこがすごい。かー、かっこいい。きゃー。というのは私の心の声です。この本の中には、落語が好きになった少年が大好きな落語家に入門し、そこからの苦悩、日々の努力、挫折が静かに描かれている。中でも胸にきたのは、「立川志らく」への嫉妬と尊敬を書いた部分で、この苦悩を共感できずにいられるかとも思ったし、そこに言葉を挟んだ立川談志のアドバイスがまたすごい。
■私は今までいい落語の聞き手ではなかったので、立川談志の落語のすごさを知らない(タレントとしての面白さはなんとなく知っている。だってそうだよね)。でもこの本を読んで立川談志という破天荒な風雲児が何故たくさんの人に愛されたかわかるような気がした。これから談志の落語を聞いてみたい、たくさん聞いてみたいという気持ちでいっぱいだ。
■落語には歴史がある。思想もプライドもある。そんな世界での修行は想像以上に厳しいだろうな。こんなはずじゃなかったとやめて行く人もとても多いはずだ。だからこその魅力がきっとあるんだと思う。厳しさに憧れる人の気持ちはなんとなくわかる。その厳しさの中で発生する感情の揺らぎこそ人間の業であり、それこそが落語なのだと談志は言っている(ような気がする)。
■読んでいる間ずっと懐かしい感覚にとらわれていて、読み終えた瞬間それが森田芳光監督の「の・ようなもの」を身体が思い出していたのだと気がついた。大学時代に観てとてもショックを受けた映画であり、それ以降「好きな映画は」という問いに「の・ようなものです」と答えていたぐらい自分にぴったり合った映画だった。前座修行中の若者たちを描いた映画で、そこに流れる「普通さ/地味さ」が当時の私にはとても衝撃的だった。映画とはトム・クルーズやジュリア・ロバーツでなければいけないと思っていたような部分があり、だから映画はあまり観ないで大学生になった。自分に合わなかったのである。「の・ようなもの」のようにダサい人が主人公であることにある意味大きな希望を見いだした私はその後さらに地味な映画を探すようになる。つまりは映画が好きになったのだ。どんだけネクラなんだよと自分につっこみを入れつつ、あの映画で描かれていた彼らと「赤めだか」に出て来る談春、談々、関西、志らくはほぼ同じなのだ。拭っても拭いきれないかっこわるさやダサさに私は心から共感する。
■で、談春さんの落語を聴きにいく予定なので私はとても楽しみなのです。
秋が来ていた
- 2011/10/26
■はえぎわタイモン遊園地の長い長いながーい時間が終わりました。気がついたら秋。ま、気づいていたけど。案の定風邪ひいて、雪見だいふくを食べ、仮眠しました。それにしても雪見だいふくは小さくなってるじゃないすか。寂しいことです。
■たくさんの方々に出会い、お世話になりました。なかなかうまく感謝の気持ちが伝わらない顔をしていると思いますが、とても感謝しているのです。そして感謝の気持ちを忘れてしまうような(もともと感じないような)人間にはなりたくないなあと思います。自分だけで生きていると思ったら大間違いです。大間違い。
■さて、いろいろやらなくちゃなあ。地道にがんばるぞー。
■最近の関心事:落語。
遊園地再生事業団#18「トータル・リビング 1986-2011 」
- 2011/10/12
遊園地再生事業団#18「トータル・リビング 1986-2011 」
10/14(金) 19:30(アフタートーク/高橋源一郎さん)
10/15(土) 14:00/19:30(アフタートーク/いとうせいこうさん)
10/16(日) 14:00(アフタートーク/岡室美奈子さん)
10/17(月) 19:30
10/18(火) 14:00/19:30
10/19(水) 19:30
10/20(木) 19:30(アフタートーク/出演者)
10/21(金) 19:30
10/22(土) 14:00/19:30
10/23(日) 14:00/19:30
10/24(月) 14:00
作・演出
宮沢章夫
出演
上村 聡
牛尾千聖
大場みなみ
上村 梓
今野裕一郎
時田光洋
野々山貴之
橋本和加子
矢沢 誠
永井秀樹
美術
林 巻子
音楽
杉本佳一(FourColor/FilFla)
衣裳
山本哲也(POTTO)
照明
齋藤茂男(シアタークリエイション)
音響
半田 充(MMS)
映像
今野裕一郎
ドラマトゥルク
桜井圭介
舞台監督
田中 翼、大友圭一郎
演出助手
山本健介、石原裕也
宣伝写真
小山泰介
デザイン
相馬 称
制作
ルアプル(金長隆子)
製作
遊園地再生事業団
共同製作
フェスティバル/トーキョー
■私はお手伝いをしています(出演しておりません)。今も楽屋で皆が「場当たり」をしている音を聞きながらこのブログを書いているのです。
■あの日から今日まで続く日々にこつこつ作り上げ、もうすぐひとつの作品が出来上がります。通し稽古を見て、私はたくさんの記憶が呼び起こされ、涙が止まらなくなりました。あの日、私たちが経験したあの瞬間。そして現在、長く続くであろう未来。
■お時間あるかたは是非ともにしすがも創造舎まで足をお運び下さい。
バナナ
- 2011/10/05
■舞台が終わって一週間強。実はまだ右臀部から太ももにかけて鈍い痛みがあります。これは筋肉痛じゃないね、たぶん。なんだろう。確かに京都公演は足が辛くて、本番に入ってからはカーテンコールが終わると苦しくて叫びそうになっていたっけ。
■横浜は急に寒くなり、私も体調を崩し気味です。というより、ずっと蓄積されてきた疲れや体のゴミのようなものが今ふつふつと燃え出し、私を地味に苦しめている感じです。だるいんですね、ずっと。アレルギーのような、アトピーのようなものも出て来ました。これは何も舞台をやってからというだけではなく、昨年からずっとずっと溜まっているもののように感じます。
■昨年からずっと長いこと、小さな休みこそあれ、ほとんど突っ走って来ました。「前向き!タイモン」が終わり、今ようやく一区切りがついたのだと思ったり思わなかったり。
■3月11日からずっと心休まることなく頑張っておられる方もたくさんいらっしゃいます。その方たちに感謝をしつつ、私がこれから出来ることは何だろうかと時間をかけながらでも考えて行こうと思います。
■たくさんの言葉が私を揺さぶり続けたこの7ヶ月。まだまだ先は長いです。一生、その先も続く長い長い福島の未来について。ひとまず今年はこれからいわきのボランティアに行ってハワイアンセンターに行こうと思います。その前に遊園地再生事業団の公演のお手伝いに行きたいと思います。是非皆様見に来て下さい。よろしくお願い致します。
※※
■ところで今日久しぶりにベーグルを焼きました(冷凍バナナを食べてしまいたかったので)。全然いい感じにはできなかったけど(寒かったのかあまり発酵しなかった気がする)、感慨深かった。何故なら2月3月はどうしてか「お菓子づくり/パン作り」に凝っていて、ベーグルを焼いたりしていたのです。最後に焼いたのが3月10日。写真が残っています。あの日以来、パンを作ろうなんて気に全くならなかった。そして今日朝起きて突然焼いてみて、「ああ」と思いました。周りが妙に固いバナナベーグルを食べながら、生きることについて考えて、また明日も私のやるべきことをやろうと思った。強く思わなければいけない。
タイモンチームのそれぞれ
- 2011/09/29
■鈴木将一朗→ラストソングスON STAGE NOW
■山本圭祐→お
■高橋啓祐→On Visualkeisuke-tk.com
■矢内原美邦→mikuni a day
■美邦さんはもう次の舞台の稽古をしている。野毛山動物園でやるんだって→「ずうずうしい」!すごい楽しみ!
※※
■新刊が出るのが待ち遠しかったマンガを購入した。すぐに読んでしまうのがもったいないので、家に帰ってからもまるでそのマンガが自分のカバンの中に入っていないように振る舞った。どうでもいい時間だったが、幸せだった。本屋が好きだ。本屋に住みたい。図書館ではなく、本屋がいい。
■京都で、朝散歩がてらで1人でこっそり行った恵文社一乗寺店はやはり素敵だった。宿泊先の宿が意外と近かったもので。店の中をぐるっとまわって、でも何も購入しなかった。公演中は本を読む気持ちになれないので、本屋に行っても気もそぞろ。何を手に取っていいかわからなかったが、それでも並んでいる本はどれも輝いていた。本の装丁、雑誌の大きさ、紙質。写真。匂いに埋もれて帰って来た。酸素カプセルに入った気分だった。あああ、また行きたいなあ。今すぐにでも。で、本を10000円分ぐらい購入したい(しょぼい夢)。
■手がガサガサしてきた。季節が変化している。今年も私の大好きでヘビーな冬がやってくる。季節を感じることが嬉しい。余裕も時間もなく突っ走った今年、気がついたら10月だ。1日1日を大切にだなんて有り体なことはあまり言いたくないけど、やはりどこかで1日1日にしっかりものを考えたいと思う。私は考えていなければぐったりしてしまうタイプなのだな。
さよなら!タイモン
- 2011/09/27
■「前向き!タイモン」京都公演が終了し、これで全日程終了しました。見に来て下さった皆様本当に本当にありがとうございました!
■楽日は昨日の昼公演。実はこの回は本当に辛かった。身体がちぎれるかと思いました。でも苦しみの中に光が見えて、その光を掴もう掴もうとしているのは私だけではなく、3人が同じ気持ちだったと思います。幸せだったな。今回、舞台上で常に3人が「1つ」だった。1人ではなく、1つという感覚。3人は全く別のタイプの役者なんだけど。でも1つだった。これは思い過ごしではないと思います。たぶん他の2人もそう思っていると思う。2人に「いやあ、そんなこともないですけどね」と言われたらまあこっぱずかしい話ですが。その気持ちが私を強く支えてくれました。それは今まで味わったことのない強い感覚で、これはもしやあの「信頼」というやつなのだろうかとふと思ったりもします。
■夜はミクニさんとキャストスタッフで京料理を食べました。今日は朝、将一朗くんと山本くんと3人でコーヒーを飲み、四条河原町の交差点近くで握手して別れました。よくもまあ飽きずに3人で行動したなあ。東京の稽古の時から3人でごはん食べて、飲みに行って、お茶して、真面目な話もどうでもいい話もあーでもないこーでもない話して。京都では「Hanako京都特集」を片手に激旨親子丼食べに行ったり、楽屋もたくさんあるのに3人で1つの楽屋に引きこもって。なんなんだあの3人/仲良しOL三人組か/気持ち悪いだろ/と言われても仕方ないぐらい一緒にいました。7月からずっと稽古していたからね、もう何か一緒にいるのが当たり前みたいになってた。だから、また東京で会えるのに、もうこの三人で芝居ができないのかと思うと、まあ、ぶっちゃけ、アレですよ。でも、我々は前向きですから、前向いて生きて行かなくちゃいけないんです。だからさっさと別れました。ただただありがとうと思いながら。
■そして演出のミクニさんに。セリフが言えないで半狂乱でパニクった私に「大丈夫だ」と何度も言ってくれた。まあ、半狂乱になるなって話ですけどね。今回何度「大丈夫だよ」と言ってもらったかわからない。それはとても大きな言葉だった。呼吸をすることを許された。その言葉を信じて今日までやってこれたんだと思います。あと今回ミクニさんにとてもとても大切なことを教えてもらいました。それはあまりにも大切なことのような気がしているので、私の胸の中にしまっておきます。ミクニさん、本当にありがとうございました。
■あとヨーロッパ企画の本多くんにすごいお世話になった。何をお世話になったかは割愛。ありがとう、本多くん!
※※
■午後は大阪に住む幼なじみに会って、生麩(最高)を食べながら、芝居の事などを話しました。それから私が一週間京都という場所にいながらにして考えた福島のこと。それはこの半年間をきちんと言葉にするという作業でもありました。自分にとっては大切な気持ちを大切な友人と共有できてよかったです。先ほど京都から帰って来て、今は大いなる筋肉痛と戦っています。いやーそれにして生麩最高。京都素晴らしいところでした。また舞台が出来たらいいな。
■「前向き!タイモン」という舞台については、また書こうと思います。私が愛したタイモンの物語について。
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