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いつもの日記

日々のあれこれ。

明日のアー「最高のアー」終了しました。

  • 2019/11/11

明日のアー「最高のアー」は全日程を無事に終了いたしました。ご来場いただきましたみなさま、本当にありがとうございました。

 

 

ここ1年ほど「今までとは違う、新しいところに行って新しい自分に会いたい」と漫然と思っていて、明日のアーが私の「新しいところ」となりました。めでたい。

明日のアー主宰の大北栄人さんとは今年の春にテアトロコントでご一緒させていただきました。コントに出演するのはシティボーイズ以来。笑いをやるのは難しいし怖いと常々思っている私がなぜテアトロコントに出ようと思ったかというと、ただもう私の勘です。タイミングです。これは出てみたらいいんじゃないかなと、自分の中身がそう思ったというか。それに加えて共演者に高木珠里さんの名前があったから。高木さんと一緒にコントができると考えただけでワクワクでしびれました。ああこれはチャンスだ、ぜひやってみるべきだ、そんなふうに思ったのです。

そして今回、明日のアー本公演に出演することになりました。

日々の稽古では皆がそれぞれに面白い。稽古中は人の芝居観てひたすら笑っていました。でも自分は果たして面白いのだろうか…ちゃんとできているのだろうか…と不安に。自虐的だよ人生は。でもあまり不安がっていてもおまえさんいくつだよと言われかねないので、もう大北さんについて行こうと。大北さんの台本は非常に緻密で知的で、そこからのダイナミック。演出もすごく論理的なんだけど、突然脱輪して、暴れ馬のごとく目の前を駆け抜けていく感じ。そのバランスがとても面白かった。そしてとにかく個性爆発のアーメンバーの胸を借りて、私は私なりにこっそりやってみようと。

会場のユーロライブに入ってからはいろいろなことが不安で落ち着かなくて、本番前にセリフを反芻しながらレッドブルを2杯飲んでしまったり、家からコンタクトレンズを30個持ってきてしまったり、飴を1日で1袋食べちゃったり、迷惑メールが1日に200件ぐらい来るようになっちゃったり、楽屋にリュックサックが2つあったり、まじでどうした案件が多発。相当不安定な人でしょ、これ。

でもどんなことがあろうとも本番は始まります。俳優といえど、否、俳優だからか、舞台に上がるのはいつもとても怖い。でも今回あんなことしたりこんなことをしたことでお客様がわーっと笑ってくれて、怖さよりも、幸福が優った。嬉しかった。私がリュックサック2つ持ってきてたことなんて取るに足らないこと。なかったことにすりゃいいのさ。

そしてここは確かに今までと違う場所であり「新しいところ」だと思った。そこで今私はコントをしている。自分としては大きな挑戦だった。でもそんな仰々しいことなんかどうでもよくて、みんなと一緒にずっとくだらないことを考えている時間が楽しかったです。

 

 

大北さんに千秋楽まで「こんなふうにやってみたらどうでしょう」と言われ続けたシーンがありました。呼吸と体が重要なんです、そのシーンは。フィジカル弱い自分ではどうにもうまくいかない。段取りを踏んでしまう。頭で考えているのがわかる。稽古しても思い通りにヒットしない。でも「できないなら仕方ない」ではダメなシーン。正解がある。ここはバチっと決めなければならない。でも決められなかった。悔しかった。まあ、藤原(浩一)さんとよシまるシンさんをビンタするってだけのところなんだけど。そのタイミングと、身体とね。はー、今思い出しても悔しいぜって、真面目か。真面目だ。ともあれ他のシーンでもいろいろ試行錯誤させていただき、すごく勉強になりました。

難しかったけど、楽しかったです。

みなさま、ご来場いただきましてありがとうございました。

10月27日

  • 2019/10/29

明日のアー、稽古。
パスカルズの石川浩司さんがいらっしゃった。とても優しい方で、嬉しい。優しい方は、稽古場を、そして表現そのものを明るくしてくれるんだな。
スタッフの皆さんが集まった。
舞台監督の新さんや照明の葛生さんは他の舞台でご一緒しているので、またご挨拶できてやはり嬉しい。再会できる喜び。そういう当たり前のひとつひとつが身に沁みる。秋だからかな(違う)。
稽古は少し悩んでいる。自信がなく、迷う。いくつかの疑問を自分に話しかけるも返事なし。んー。ふと、あるシーンの組み立てを別方向からアプローチしてみたくなる。その方がうまく伝わるんじゃないか、とか。やってみたけど、だめだ。違った。稽古しなくてはいけない。こんな時は台本読んで、稽古しかない。
帰り、渋谷駅で盛大に転ぶ。本当に情けなくなる。歩き方が下手なのだ。大人なのにこんなに転んでいていいんだろうか。
全くもって苦手なことが多い。仕方ない。面白いこと考えたい。
ちょこちょこお菓子を食べて鼻呼吸して寝る。

過日の明日のアー

  • 2019/10/27

この写真は稽古が始まってまだ日が浅いとある日。
私は今、この写真の顔の5倍ぐらい疲れた顔になっている。
でも、楽しいです。
明日のアー、見に来てください。
撮影は明田川志保さんです。

10月26日

  • 2019/10/27

昼から明日のアー稽古。荷物がいっぱいあったのでスーツケースで向かう。スーツケースを持っていると旅行気分になるので危険。
目的地に早くついたので駅近くの大型スーパーに行ってみると、福島物産展が開催されていた。かなり大規模だ。南相馬市の味噌漬けを買う。あとはいわき内郷にある和菓子屋のたこせんべい。内郷は私の昔の本籍地。応援したい。
稽古は様々な実験、のちに通し稽古。問題点は書き出す。赤ペンで書いてあったり青ペンで書いてあったり、台本がわけがわからなくなってきた。
帰り、駅で皆と別れ、母にメール。元気だった。
帰りの電車で、今回誰とも一回も呑んだり食べたりしていないなと思った。稽古中はコントのことしか考えていないし、稽古が終わったらさっと帰る。だから誰のこともよく知らないけど、それでも稽古を見ていれば少しはわかるし、何となくその人のことを想像するというのも面白い。
でも、たまには話してみたい。そのうちに。

10月25日

  • 2019/10/26

昼、大雨。
稽古。

実家のいわきはまた大雨が降っていて、家族や家のこともあり気が気でない。災害に限らずこういう時は今までに何回もあった。気持ちが落ち着かないが何らかの場所に立つときのことだ。これからだってこういう心持ちを抱えていくんだろうな、そうだ、これは何も特別なことではない!生きていく上でよくあることなのだ!と言い聞かせてみた。案外すぐに自己暗示にかかり、それでなんとなく落ち着く。

明日のアーの稽古。日々皆の自由さに感動している。ツボなシーンがある。何度見ても笑ってしまう。そのシーンを宝箱にしまいたい。

わたしももっと考えたい。それから自由になりたい。

深夜、オリオン座、おおいぬ座が見える。綺麗だシリウス。星マニアとしては嬉しいが、遠い空を思うと辛かった。家族や土地を、知る景色を、生活を思う。言葉は全然追いつかず、祈るしかなかった。

8月が終わる/夏はクロールだ

  • 2019/08/30

8月も終わりに近づいている。

もう新学期が始まっているところもあるんですね、夏休みも終わり。

学校に行きたくない子、たくさんいるだろうな。

行ったり行かなかったりでなんとかやり過ごし、食欲の秋はもうすぐだよ!

そこまでひとまず、頑張ってほしい。

学校が辛かったら、超適当に過ごして欲しい。

行ったり行かなかったりで、適当に、適当に、相当適当に。

 

という私はあまり適当なタイプの子供ではなかった。

昔の事を思い出すと嫌になる。

夏はプールが嫌だった。全くのカナヅチである。必ず5mで足がつく。皆の前で先生に「そもそもカサギさんは泳ぐ気がないんだよね」と言われた事は忘れない。恥ずかしかった。

私はものすごい運動音痴で球技陸上体操ほぼ全ての競技が全くと言っていい程できなかったのだが、水泳は特に嫌で仕方なかった。泳げもしないのに全身水に濡れるのがバカバカしかった。クラスメイト全員で急いで着替えなければいけない事も嫌だった(あのテルテル坊主みたいなタオルの中で水着を脱ぎ着するのが窮屈で大変苦手だったのだ)。髪の毛が濡れると体が弱めな私は平気で風邪を引いてしまう。そんなこんなで何ひとつ楽しくなかった。

チャレンジはしてみる。5mまでは蹴伸びで何とかいけたが、その先の第一回目の息継ぎで毎回身体が沈んでしまう。そんな私に友達がこぞってアドバイスをしてくる。「浮いてない」「もっとまっすぐ」「足で蹴っていない」…わかってる、わかってる、でもできない!橘いずみ「永遠のパズル」状態。親切なんてうざったい。そんなことを思ってしまう自分も含め、何もかもが嫌だった。

夏が嫌いだ。でも、冬はマラソン大会があり、春はスポーツテスト、秋はクラス全員リレーがある最悪な運動会…季節ごとにメニューは違えど、それぞれ最高級に憂鬱だった。どの季節もだめ。何の能力もない私。皆から笑われ、エヘヘとおどける私。優しい友人たちに気を遣わせて、謝る私。母と日没まで練習しても一回も逆上がりができない私。私って一体…と自問自答の日々。

できないことがあるのはとても重かった。何かを恨んだりもした。

 

 

しかし43歳の夏、私はスポーツジムのプールに通っている。

高校3年生の時のプールの授業中、いつも通り5mしか浮かない私に向かって「ふざけてるの?」と言った先生がいた。そんな言葉にはもう慣れているはずなのに、私はその時だけはどうしてだか人目も憚らず大泣きして「ゼッテー見返してやる!」と叫び、泳げるようになってやる、と先生とクラスメイト全員の前で宣言してしまったのだ。何をしているのか、自分でもみっともないと思う。

かくして受験勉強そっちのけで区民プールに通う羽目になる。

小学校の時には友達のアドバイスに全く耳を傾けられなかった私だが、背に腹は代えられぬとクラスで一番運動神経の良い女友達数人に声をかけて、コーチを依頼。何度も溺れかける私の動きを見てもらい、分析をお願いした。

友達は皆しばらく考えていたように思う。そしてその中の一人に、

「息継ぎする時頭をそのままカメみたいに上げているから沈むんじゃないの?息継ぎの時に左耳をぴったり左腕につけてみて。横向く感じ」

と言われて、あ、はい、と、やってみた。

気がついたら25m泳いでいた。

そのたったひとつのアドバイスだけで、25m進めたのだ。

初めて25m先のプールサイドにタッチした私はもちろんオンオンと大泣きした。長かった。あっという間だけど、ものすごく長かったのだ。25mも長かったし、泳げない日々がものすごく長かった。泣きじゃくる私を見て友達は大爆笑していた。

 

今年の夏は何となくプールに通っている。

体力作りのためでもあるのだけど、うまく言えないけれど、私が初めて自分で獲得したクロールというのもが恋しくなった。

もしかするとクロールは私の心の拠り所、もしくは宝物かもしれない。

ちなみに平泳ぎはいまだにできない。さらに言えば、逆上がりや二重跳び、キャッチボール、バドミントン、卓球なども多分まだできない。できないことだらけ。いろいろなことが一生できないで終わりそうだ。そんなものだろうな。

そして今興味あるのはボルダリングなんだけど、まあ、絶対に、できないだろう。でもやってみたいなあ。そんなことを思うなんてどうしたんだろうなあと不思議でもある。

 

 

8月も半ば

  • 2019/08/11

7月の日記が書き終わらないまま、もう8月だった。知ってた。

7月も8月もいろいろなことがあったな(と書かなかった日々のことはもう書けないとあきらめる)、しかしこの数日はとにかく暑い。アイスを食べて何とかしのいでいるが、これは内臓によくない、と知っている。それでも食べずにはいられない、ダメな私だ。飴とアイス。そればかり。ダメだなあ、本当に。しっかりしなければ。

睡眠障害。よく眠れない日は継続中。こんなに寝ないでも元気なのは変なので、昼間目を開けたまま眠っているのかも。歩きながら寝ることもあるように思う。

たまに時間があると録画しているドラマを見る。山田太一脚本「想い出づくり。」は古手川祐子さん、田中裕子さん、森昌子さんがそれぞれ美しい。そして登場する男性がどいつもこいつもヒドくて辛くなる。目を覆いたくなる程、ヒドい。ドイヒーですよ、こいつら。これから彼らはどんな形で優しさや愛や、生き様を見せてくれるのだろう、そんなことを考えながら見ている。

イギリスのテレビ番組で、選抜された一般の方がお菓子作りを競う「ブリティッシュベイクオフ」。最近はこの番組が面白くて、楽しみにしている。「プロジェクト・ランウェイ」が終わってしまって私はいったいどうすれば・・・と思っていた矢先に、この番組。文字通り老若男女が与えられたテーマに沿ってお菓子を作るというだけのごくごくシンプルな番組なのだが、すごくいい。穏やかで、素敵な番組だ。私もおかし作りが好きだから、出来上がるまでの過程に(成功か?失敗か?膨らむのか?こげるのか?みたいなところ)に非常にワクワクする。しかし私は困ったことに作るのは好きだけど、できあがったお菓子にそんなに興味がないのだ。できてしまえば、もう他人。だから、作ったら友人にプレゼントする。私には何事にもそういうところがある。

今日は友達の命日だ。元気でいるだろうか。

7月の日記4 ミクニヤナイハラプロジェクト「日々」

  • 2019/07/26

7月14日 日曜日

朝、雨。

横浜駅へ。高速バスに乗る。

ミクニヤナイハラプロジェクトのパフォーマンス「日々」を観るため市原の湖畔美術館へ。

バスは海を渡り、千葉県へ。子供の頃千葉に住んでいたが、千葉はとても広いということです。私が住んでいたのは柏市、東葛飾エリア、こちらの方には馴染みがない(なので、「東葛スポーツ」という名前にはとてもシンパシーを感じている、関係ないけど)。

美術館は湖畔にあった。そりゃそうだ。緑が深い。森の繁りに勢いがあって気持ちがいい。霧雨の中、美術館の芝生をふむ。

美術館の敷地の中にあるピザレストランは繁盛していた。ここでコーヒーでも飲もうと思ったが、1時間程度待つとのこと。名物だというジェラートをテイクアウトして外で食べる。寒い、けれど、最高に美味しい。あと2個ぐらい食べられそうな美味しさだった。

パフォーマンス「日々」は、美術館の企画展「更級日記考 女性たちの、想像の部屋」の中のもの。橋本和加子さんと八木光太郎さん、どちらも魅力的で面白かった。可愛いし二人とも。キュートっていうのかなあ!

そして書かれた言葉が近い。ミクニさんの言葉は自分の体の中にしみこむ。歩いて、考えて、東京から離れて、すごくなんだか豊かな時間だった。

バスで東京へ。千葉から東京に行く便はほぼ満員だった。

夜、横浜。

 

この、ビスケットも美味しいかった。また食べたいなあ。

7月の日記3 

  • 2019/07/17

7月9日火曜日

 

選挙が近づいているので、公約などを読む。なるほど。ネットが普及して、公約などがわかりやすく自分の手に届くようになった。今回はどの政党を応援するのか、この人たちのことは全く信用していないぞ、この人個人をなんとかしたいなど、たくさんの要素を総合して1票を投じなければな。政見放送も見る。これは毎回いろいろな意味で味わい深いものもあるけども、それも含めてなかなか見応えがあるのでたくさんの人に見てほしい。そして共有したい。選挙は欠かさない。両親の教えでもある。子どもの頃から「選挙は何が何でもいくように」と言われてきたので、行くことが当たり前になっている。

公約、だまされてはならないよ。たくさんの弱き者、私も含め、たくさんの小さな者のため、そして子供達のために考えなくては。

街を歩くと、目は盗まれた自転車を探している。ないね。

ヨガに行く。ヨガのポーズの名前はやっぱり面白いなあ。山のポーズって、全然動かない。ただ立っているだけなのだけど、先生や雑誌曰く、それが1番難しいとのこと。

 

7月10日水曜日

 

とある報道を読む。裁判の記録である。どうしても許せない。怒りが湧き上がってくる。これをなかったことにしてはならない、と自分の中で怒鳴っている。許せないのだ、どうしても。許せない。落ち着こう、落ち着いてきちんと情報を取り入れよう。でも、どうしても、やっぱり許せない。

昨日の夕食後気管が狭まった感触がひどく、思い切って食物アレルギー検査をしに病院へ。先生に「昨日は何を食べましたか?」と聞かれ、「あれとあれとあれと…」と答えたところ、「やばいものばかりですね」と言われた。アレルゲンの可能性が高いものばっかり食べてるってことか。

結果は1週間後とのこと。ずっとやってみたかったのだ。楽しみだな。

夜とあるミーティングに参加。

 

7月11日木曜日

 

雨がそぼ降る中、神宮球場へ。数ヶ月前から楽しみにしていたイベント、ヤクルトスワローズの記念試合ドリームマッチへ。往年の選手、スターたちが集った。なんとガイエルもいた。若松監督の若さ、野村監督の雄姿やぼやき、そしてその横に寄り添う古田さんにもグッときたけど、それ以上のやたら大きなものに包まれてしまって終始涙の観戦となった。

神宮球場はほぼ満員。たくさんのファン。ペナントレースとは違う、ぽかんと空に浮いたようなのんびりとした一日。皆幸せそうだ。私は何を見ているのかな。選手かな、ファンの顔かな、それともこの世界かな。

私たちは日々の中拠り所を求める。探し、見つけ、語り、落ち着き、離れたくなくなる。時間を止めたくなる。でもわかっている。いつもここから進まなければいけないのだと考える。

自転車を買わなくてはなと調べ始める。先に進もう。

 

7月13日土曜日

 

朝知らない携帯の番号から電話がある。

「警察署のものですが、自転車の盗難届出されてますよね?」

見つかった。驚いた。乗り捨ててありました。隣町の高架下近く。取りに行く。家からは歩いて20分程度のところ、自転車は路地に乗り捨てられていた。その路地にある家の方が「邪魔だったから」と警察に通報してくださって見つかったとのことで、お礼をいう。「見つかってよかったねえ」と優しく声をかけてくださった。いい方だ。捨てる神あれば拾う神ありだ。そしてあのスーパーボランティアの方に顔がどことなく似ている。ありがとうございました。

そのあと警官さんが「科捜研の女」よろしく自転車の指紋を採取したり、訂正印を含め10箇所以上書類にハンコを押したり、といろいろあった。家で仕事をするはずだったが、自転車がらみでバタバタした1日だった。しかし、私の元に自転車は帰ってきた。よかった。ただただよかった。

盗まれて、すぐに見つかるなんて日頃の行いがよかったのだろうか?と思った瞬間、そもそも盗難にあっているのだから行いがよかったわけでは決してないなと思い返す。すぐそうやって自分を正当化する!自分にめっぽう甘いのだ、私は。

 

 

 

 

7月の日記2 「プラータナー」のこと/自転車

  • 2019/07/07

 

 

7月5日 金曜日

「プラータナー:憑依のポートレート」を観に池袋の東京芸術劇場へ。

この舞台についてtwitterなどでは様々な感想や舞台写真が掲載されていたのだが、それは基本何も見ないようにする。感想を先に知るのが何だか勿体無い気がしちゃって。貧乏性なのかな。自分の目でまずは見てみたい。上演時間が4時間ということ、演出がチェルフィッチュの岡田(利規)さんだということ、俳優が全員タイの方だということぐらいは知っていたのでそれでいいやと。「知らな過ぎだろ!」とも思いつつ、でもちょっと乱暴な、そういう気分だったのだ。

追加公演ということで、朝11時からの上演。早起きのわたしにはありがたい時間設定。舞台休憩がそのままランチの時間になるのだろうということでコンビニでバナナを買っていく。バナナ持参の劇場入りとは、まるで自分が舞台に出演するときのようだ。

4時間を堪能する。観終わって思ったのは、すごくよかった、観ると決めて本当によかったということ、そして、この諸手を挙げて感動とかではない浮遊する気持ちの置き場のなさ、だった。うまく言葉にできない、誰とも共有できない、自分が正しいのか間違っているのかわからないけど、ちゃんと自分の言葉や感覚で判断しよう、ぼんやりした頭と身体でそう思った。帰り道もずっと考えていた。まずタイの俳優さんがとても魅力的だった。身体も、声も、映画も、動きも、全てに釘付けだった。みんな可愛い。チャーミング。ずっと観ていたい。そして岡田さんの演出はものすごくかっこよかった。岡田さんの目が私たち観客の目になって、同じものを観ている瞬間がずっと続いている気がした。岡田=わたし。それは今まで感じたことなかった感覚な気がした。その同化とはまた別に、急に岡田さんの目がレンズとなり、そこに描かれている世界は異国の映画となっていた。いきなりピョーンと飛躍していくのが、感覚的ですごく面白くて興奮する。岡田さんってどうなってるのかな、頭の中。稽古を見てみたい、そしてどんな風にこの世界が構築されたのか目撃したい。それは藤谷香子さんの衣装もcontact Gonzoの塚原悠也さんの振付もすごくよくて、なんというか、語彙なくて恥ずかしいんだけど、全体通してめちゃくちゃよかったのだ!でも、わたしはそのことに全然喜べない自分に気がついてもいて、それが何なのかと考えていた。

それはようやく自分の中で言葉になりつつあって、それはやっぱりどうしたってウティット・ヘーマムーンさんの書いた「プラータナー」という原作の存在だ。この原作小説に書かれているものがあまりにきつい。もう本当に苦しかった。それは何も主人公の内面描写や性描写がきついということでは全然なくて、書かれた言葉の先にある、結果的に追い詰められる「生」について、わたし自身が対峙しなくてはいけないという現実に。そこをすっ飛ばしてこの作品を「わー素晴らしい!」とか軽々しく言えねえよって思ったのだ。タイという国の政治情勢、苦しむ若者の性、消えてしまう命、生きづらい、とにかく生きづらい、そんないろんな要素が複雑に絡み合っているこの舞台。わたしはタイの国が抱えている問題を何も知らない。しかしここに存在する全ての瞬間を自分のこととして、置換して考えてしまう。この国で(タイで→日本)で、弱い存在である私たちはどうやって生きていけばいいのだろう。世の中から絶対になくならない闇についてわたしはどのような考えを表明すべきなのかだろう。それは別に他人へ表明するということではなく自分自身の生きるための意思としてどう考えればいいのかと、突きつけられる。だから、この舞台と向き合うのが怖いのだ。小説、怖くて読めない…。きっと身体も心も持って行かれてしまうにきまっている。それが耐えられるのか。「傑作です!」って晴れやかに言えるのか、自分が心配なんだ。別に言えなくていいのか?でも自分のくせとして、やっぱり観たものに何かしらの決着をつけたいのかも。

後半、ある若者の死が描かれる。その物語が悲しくてずっと寂しい。書いている今も泣きそう。死なないで欲しかった。物語(フィクション)に対して、そんな馬鹿げた感想あるかね?でもね、無責任なこと思ったんだけど、わたし以外の観客の多くの人が同じ気持ちになったんじゃないかな。「死なないで欲しかった」と。だからといって「物語の中で人が死ぬのに辟易している」という意味では全然なくて、「彼」が死んでしまうことが、本当に残念だと思ったのだ。で、その寂しさ、心持ちがずっと続いている。死が近い、わたしにもあなたにもって感じ。こんな悲しい死は舞台上ではなく日常にあるのだと、自分は他の誰れ彼と同じように寄辺ない存在だと、皆気がついているのかもしれないな。

考えながら、帰宅。時間が経って、少しずつ冷静に考えられるようになる。隣駅で途中下車して買い物をする。夕食はたこを食べる。アピチャッポンに続いてのタイ。全然違うものだけど、寄り添ってもいる。世界が広がり、思考が進み、遠くにあったものを身近に感じる。

どちらもよかったな。観てよかったな。やっぱり小説、読んでみよう。

メモのつもりだったが長くなってしまった。読み返し、全然うまいこと書けていないと思う。仕方ない。

 

7月6日 土曜日

自転車を盗まれる!ショック!自転車屋の孫なのに(関係ないけど)。

 

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