わたしの新宿
- 2007/12/06
■いやー最近寒いですねー。ところで、昔ビデオ屋でバイトしていた時の友達と飲んだ。「カサギさんと飲むなんて100年ぶりですね」と言われた。
■自分の青春が今はつぶれた新宿の小さなビデオ屋にぎゅうぎゅうにつまっていたことを思い出した。あの頃よくバイト仲間と新宿東口靖国通りの和民で朝まで飲んだ。私の人生で唯一の不良時代である。ってたいした不良じゃない。タバコ吸って朝まで飲んでバイトに行っては奥の事務所でパソコンゲームに興じアムウェイに入会した他のバイトくんを無視し芝居の話をしたり映画の話をしたり悩んたりしていた時期。バイト仲間と非常に仲がよかったのだと思う。いつも何人かで遊んでいた。大学生、だったのかな?20歳から24歳ぐらいまで断続的に働いていた。
■紀伊国屋書店の地下にあるたいして美味しくない定食屋Kにやたらと行った(まだある店なので匿名)。歌舞伎町の来々軒というラーメン屋にもずいぶん行ったがその店はもうない。その他「新華月」、「こぶた注意報」(とんでもない店名ですね)、TOPSビルの横にあるケンタッキーの地下にそば屋があって、そこにもずいぶん行ったなあ。名前忘れちゃったけど。あの頃靖国通りに全てがあった。言い過ぎです。思い出の一ページとしては何だかあまりカッコいい場所じゃないが、いつも靖国通りにいたので仕方ない。しかも自分には何だかお似合いな気がする、新宿靖国通りって。
■その場所場所でくだらない話しかしていなかったというとても大切なことを私はかなり忘れていた。まあそれは話しているうちに簡単に思い出せたけど、あの頃何をくだらないと思っていたかというその雰囲気というか空気がなかなか蘇ってこない。目の前の友人も私ももう大人になっちゃったんだなあ。まあ当然だし、それでいいのです。どんどん歳をとれば様々なことがどんどん面白くなるはずだから。彼は店に入って来た時は確か大学1年生だったが、もうすぐ30歳になるんですと言った。私はもうすぐ32です。友達はいい40歳になりたいものです、みたいなことを言った。40歳になってもまたこうやって新宿で飲もうと思う。
■ルキノ・ヴィスコンティ「若者のすべて」を観る。一カ所唐突なズームが面白かった。長い映画なので人間のクズ役にもたくさんの同情を感じる余裕を持てた。シモーネという名の男が最高にダメで、哀しかったなあ。これからダメな人のことを「シモーネ」って呼ぼう。こうやって人はダメになるけどそのダメなシモーネ自身を否定しないところがいいと思う。ダメさを憎んで人を憎まず。そしてシモーネの弟ロッコの品行方正で真っすぐな生き方が余計にシモーネを孤独にしていく様が面白い。女にまつわる不幸を執拗に追うカメラに映画監督の非情さを感じつつ、共感を決してすることはないであろう男の悲しみを感じ、また一瞬触れた気がした。ロッコを愛しシモーネをダメにした女ナディアは、腹が立つ程哀しい。むかつくな、不幸な女は!ニーノ・ロータの音楽、静かでとてもよかった。まるで彼らの人生に寄り添うように流れていた。