西へ3
- 2019/06/23
<前回までのあらすじ>
友人に会う旅の2日目、前半は奈良。優しき友人夫婦(Sちゃん、旦那さんはMさんと名称の記載を統一することにした)に導かれ、奈良を満喫する。特に気に入ったのは心やさしきシカと東大寺の金剛力士像だった。
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午後は、京都へ。近鉄電車の特急に乗る。奈良から乗った電車にはなぜか知人の俳優が乗っていた。二度見した。やっぱりそうだ、あの人だ。知り合いだけど、声をかけずにそのまま京都へ。旅先で突然話しかけられるの、嫌だろうなと思っての判断。
京都駅に到着し、地下鉄に乗る。烏丸御池駅で乗り換え、京都市役所前。Mさんがまたもやナビをしてくれて、一保堂茶舗の本店、喫茶室へ。寺町通りを歩きながら、あれこの道、この建物見覚えがあるな…と思っていたら、わあっと記憶が蘇ってきた。一保堂の向かいにある耳鼻科、そこはミクニヤナイハラプロジェクト『前向き!タイモン』京都公演の時に声が枯れそうになって駆け込んだ耳鼻科だった。私はほんの少しの不調を見つけたら旅先でもどんどん病院に赴きドーピングをして本番の舞台に臨む。知らぬ土地だろうとグイグイ薬をもらいに行く。『タイモン』の時は、京都在住の友達に聞いてここの耳鼻科に走り込んだのだと思い出した。その節はありがとうございました。
一保堂の喫茶室で私はほうじ茶、Sちゃんは抹茶の濃いお茶、Mさんは新茶を選ぶ。お店の方がお茶の美味しい入れ方を教えてくれるのだか「ここから45秒で…そして1分待って…」と結構タイトスケジュール。これはコトだ。私とMさんは促されるままにお湯を入れたり入れなかったりして、そして完成した茶を飲む。「う、う、うまい!」今まで飲んでいたほうじ茶は何だったのかというぐらい美味い。もちろん茶葉もいいのでしょうけれども、これが入れ方のストイックさから生み出される美味さなのかと驚く。Mさんに至っては、「もう、これは、出汁!」と言っていた。お茶ではない。出汁。Sちゃんの注文した濃茶は海苔のような粘度で、これももはやお茶ではない。ペーストだ。お茶だけど。私たちの考えているお茶とは一体何なのか。
あまりの美味さに感動してこれから会うもう一人の友人にほうじ茶の土産を買う。
店を出て、途中雨が降り出す。昨日の悪夢がトラウマとなり蘇る。心の中は穏やかではなかったが平静を装いつつ、錦市場へ移動。かの有名な包丁の店「有次」に行ってみたかったのだ。憧れの包丁。包丁にお金をかけてみたい。そんな贅沢なことできない。そこにお金をかけるのは素敵なことだ。でもできない。見るだけならいいよね。と、口にしたらただただ面倒臭いだけのやり取りを自分自身に収めながらの錦市場はとにかくものすごい混んでいた。混んでいるのに歩きながら何かを食べている人が多くて驚く。皆器用だよ。私だったらこぼしたりつまずいで人の服を汚したりと、そんな未来はお見通しなのでもちろん食べないやらない。元来買い食いは大好きだ。いつも外で歩きながら何かを食べていたいぐらい好き。でも人のいないところでしか食べてはならないぞと心に決めている。私が大のソフトクリーム好きと知るSちゃんは「食べたくなったらいつでも(私たち夫婦に気兼ねなく)ソフトクリーム食べてね」と私の単独行動をさりげなくアシストしてくれた。しかし、我慢だ。
有次にたどり着く。美しい包丁が並んでいてドキドキする。かっこいいなあ。しかし鉄製の包丁は油断するとすぐに錆びてしまうとのことで私のようにずぼら者が持ってならないと判断し購入は控える。少しほっとした自分がいた。そこでMさんオススメの魚の骨抜きを買うことにした。Mさん曰く、ピンセット型の骨抜きには関東型と関西型があり、自分はやはり関西型の方が使いやすいとのこと。形に違いがあるなんて全く知らなかった。
図にしてみた。
持ってみると、確かに使いやすそうな気がする。Mさんの言葉に背中を押されて関西型を購入。これはいよいよなめろうを作る時が来たなと思った。人生初なめろう。やった。楽しみ。
ここで二人とはお別れ。ありがとうSちゃんMさん。二人は漬物とだし巻き卵を買って、家に帰って行った。
ここで告白する。Mさんは私の濡れそぼったニューバランスが入った重たいリュックサックをずっと背負ってくれていたのだ!そのおかげで私はひょいひょいと身軽に動くことができた。奈良京都旅をナビゲートしてくれたり、柿の葉寿司のわがままを聞いてくれたり、たくさんの知識をくれたりとMさんにはもう本気で頭が上がらない。いつか恩返ししたい。このブログを読んでいないと思うけど、Mさん本当にありがとう。
まだまだつづく