8月が終わる/夏はクロールだ
- 2019/08/30
8月も終わりに近づいている。
もう新学期が始まっているところもあるんですね、夏休みも終わり。
学校に行きたくない子、たくさんいるだろうな。
行ったり行かなかったりでなんとかやり過ごし、食欲の秋はもうすぐだよ!
そこまでひとまず、頑張ってほしい。
学校が辛かったら、超適当に過ごして欲しい。
行ったり行かなかったりで、適当に、適当に、相当適当に。
という私はあまり適当なタイプの子供ではなかった。
昔の事を思い出すと嫌になる。
夏はプールが嫌だった。全くのカナヅチである。必ず5mで足がつく。皆の前で先生に「そもそもカサギさんは泳ぐ気がないんだよね」と言われた事は忘れない。恥ずかしかった。
私はものすごい運動音痴で球技陸上体操ほぼ全ての競技が全くと言っていい程できなかったのだが、水泳は特に嫌で仕方なかった。泳げもしないのに全身水に濡れるのがバカバカしかった。クラスメイト全員で急いで着替えなければいけない事も嫌だった(あのテルテル坊主みたいなタオルの中で水着を脱ぎ着するのが窮屈で大変苦手だったのだ)。髪の毛が濡れると体が弱めな私は平気で風邪を引いてしまう。そんなこんなで何ひとつ楽しくなかった。
チャレンジはしてみる。5mまでは蹴伸びで何とかいけたが、その先の第一回目の息継ぎで毎回身体が沈んでしまう。そんな私に友達がこぞってアドバイスをしてくる。「浮いてない」「もっとまっすぐ」「足で蹴っていない」…わかってる、わかってる、でもできない!橘いずみ「永遠のパズル」状態。親切なんてうざったい。そんなことを思ってしまう自分も含め、何もかもが嫌だった。
夏が嫌いだ。でも、冬はマラソン大会があり、春はスポーツテスト、秋はクラス全員リレーがある最悪な運動会…季節ごとにメニューは違えど、それぞれ最高級に憂鬱だった。どの季節もだめ。何の能力もない私。皆から笑われ、エヘヘとおどける私。優しい友人たちに気を遣わせて、謝る私。母と日没まで練習しても一回も逆上がりができない私。私って一体…と自問自答の日々。
できないことがあるのはとても重かった。何かを恨んだりもした。
しかし43歳の夏、私はスポーツジムのプールに通っている。
高校3年生の時のプールの授業中、いつも通り5mしか浮かない私に向かって「ふざけてるの?」と言った先生がいた。そんな言葉にはもう慣れているはずなのに、私はその時だけはどうしてだか人目も憚らず大泣きして「ゼッテー見返してやる!」と叫び、泳げるようになってやる、と先生とクラスメイト全員の前で宣言してしまったのだ。何をしているのか、自分でもみっともないと思う。
かくして受験勉強そっちのけで区民プールに通う羽目になる。
小学校の時には友達のアドバイスに全く耳を傾けられなかった私だが、背に腹は代えられぬとクラスで一番運動神経の良い女友達数人に声をかけて、コーチを依頼。何度も溺れかける私の動きを見てもらい、分析をお願いした。
友達は皆しばらく考えていたように思う。そしてその中の一人に、
「息継ぎする時頭をそのままカメみたいに上げているから沈むんじゃないの?息継ぎの時に左耳をぴったり左腕につけてみて。横向く感じ」
と言われて、あ、はい、と、やってみた。
気がついたら25m泳いでいた。
そのたったひとつのアドバイスだけで、25m進めたのだ。
初めて25m先のプールサイドにタッチした私はもちろんオンオンと大泣きした。長かった。あっという間だけど、ものすごく長かったのだ。25mも長かったし、泳げない日々がものすごく長かった。泣きじゃくる私を見て友達は大爆笑していた。
今年の夏は何となくプールに通っている。
体力作りのためでもあるのだけど、うまく言えないけれど、私が初めて自分で獲得したクロールというのもが恋しくなった。
もしかするとクロールは私の心の拠り所、もしくは宝物かもしれない。
ちなみに平泳ぎはいまだにできない。さらに言えば、逆上がりや二重跳び、キャッチボール、バドミントン、卓球なども多分まだできない。できないことだらけ。いろいろなことが一生できないで終わりそうだ。そんなものだろうな。
そして今興味あるのはボルダリングなんだけど、まあ、絶対に、できないだろう。でもやってみたいなあ。そんなことを思うなんてどうしたんだろうなあと不思議でもある。
2 Comments
tomohiroh
30th 8月 2019 - 21:06:01いい話でした読んでよかった。
kasagi
31st 8月 2019 - 0:28:18tomohirohさん、こんばんは!コメントありがとうございます。そんな風に言っていただけるなんて嬉しいです。小学生時代の私も喜ぶことでしょう。