それでも
- 2008/09/24
■「それでもボクはやってない」を観た。2時間20分弱の作品、あっという間でした。
■先日小田急線で全く同じような状況下に出くわし、その時私が電車の中で立っていた場所はまさに映画の中の唯野未歩子さんの場所だったのでした。私は痴漢容疑の男性と被害者の女子高生の近くでただ呆然とするだけでした。彼が果たして本当に女の子のスカートの中に手を入れたのか、私にはわからなかった。でも満員の電車の中で現に女子高生は涙を流し痴漢容疑の男は「おれじゃねえ」と否認し周りの男性は「いつもやってんじゃねえのかよ」「謝れよ」「オレは見たぞ」と口にしていたのです。
■今現在の裁判所は本当がどこにあるのかを見つける場所ではなく何かに折り合いをつけるための場所だと描かれているように思いました。そして映画監督のメッセージとして、その曖昧さに反抗する姿勢も感じ取れました。上にも記したように自分のすぐ横で起きた痴漢事件の感触がまだ生々しく残っている私にとって、心の揺れる映画でありました。真実はどこにあるのかを第三者が判断するということの難しさ。
■重いテーマの中、本田博太郎さんの存在が可笑しかった。さすが。正名僕蔵さんもすごく素敵だった。
わたくし率、円周率
- 2008/09/21
■水戸から帰って来て。何かごちゃごちゃしている1週間。友達と会いたくなったり会いたくなくなったり、ちょっと不安定でした。まあ、こういう感情の揺れはもう何億回も経験しているので耐性アリアリバリバリおとなしくしていました。こんな時役に立つのは、「意図的に独り言を言う」行為です。頭の中で言葉を溜めない。とにかく吐く、しかも人に迷惑かけずに。大人のマナーですよ。ねえ、あんた独りでも喋ってんの?普段人の何百倍喋ってるくせにまだ足りないの?気持ち悪いねーという声が聞こえて来ますね。被害妄想ですか。あら。
■宮沢さんに会いました。術後順調のようでひと安心。最近購入されたiPhoneを見せてもらいやした。見てたら今まで興味なかったのに急にほしくなった。こわいですね。
■いせゆみこちゃんが出演しているシャンプーハットの公演「葡萄」を見ました。シャンプーハット観劇は「津田沼」以来です。さらに言えば私が出演させていただいたのはもう10年以上も前・・・。いせさんとっても素敵でした。キュートって言葉が似合う人。見とれたわ。
■川上未映子「わたくし率 イン 歯ー、または世界」と藤原正彦と小川洋子の共書「世にも美しい数学入門」を図書館で借りて読みました。数学苦手なんですが(0点経験あり)、今更ながらきっと何か少しでも理解できたら楽しいんじゃないかと思いまして。本の中で一番気になったのは「ビュッフォンの針の問題」。紙にたとえば10センチメートルの幅で平行線を何本も引いて、そこに平行線の幅の半分の5センチメートルの針を投げると、針は平行線に触れて交わるか、線に触れず平行線のあいだで横たわるか、どちらかになる。その触れる確率が1/πなんだって!ってことはすなわち3.141592・・・分の1ってことですよ。ええええええ何でですか?普通1/2じゃないんすか?何故いきなり円周率?丸は今全く関係ないじゃんよ!って感じで全く意味不明なんですけど、そこが面白かった。高校生の時分にこんな本に出会えていたらきっと。ま、出会えていても0点はとっただろうがねえ。当時本気で数学死んでくれと思っていましたもの。
■某習い事。自主練の日々。毎日少しずつ出来るようになるから人間ってすごいなあと驚いてます。
水戸短編映像祭の司会をしてきた
- 2008/09/17
■第12回水戸短編映像祭に行ってきました。初日13日は「シャーリーの好色人生」「シャーリーの転落人生」を見ました。「好色人生」は舞台での大先輩、小田豊さんが最高に素敵でした。憧れの中川安奈さんも出演!めくるめくシャーリー絵巻。そして映画はそのまま「転落人生」に続きます。二本立て。どでかいスクリーンに自分の顔がドアップで映り続けるのはさすがにいかがなものかと思いもしましたが、映画は非常に面白かったです。共演者である女優の瀬戸夏実ちゃんと笑いをこらえながら見ました。今度は仙台の映画祭で上映されるらしいですよ。
■二日目は時間があったので一人で水戸市内を散策し、気の向くままに大洗まで行ってまいりました。水戸から大洗鹿島線(1両のみ!)で大洗駅、大洗駅からレンタサイクルを借りて大洗港でフェリーを見るといういきあたりばったりに決めたコースです。
■大洗鹿島線、電車も駅もすべてがローカル色100%。かっこよかったです。しかしレンタサイクルがなあ・・・借りたはいいのだけど車輪が小さくて全然前に進まないので、おそろしく疲れました。坂を登り汗をかきながら「私、見知らぬこの街で一体何を・・・」とも思いましたが、海で食べたソフトクリームは格別。フェリーはでかいが、ももパンパン。
■夕方から水戸短編映像祭に戻り、ホフディランライブを鑑賞しました。「欲望」とか「スマイル」とか、昔よく聴いた曲のオンパレードですごく楽しかった。「欲望」はまだ縦長サイズのCDシングル持ってます。大学生の頃に買ったのかな。懐かしい。ワタナベイベーさんもユウヒさんもあまり昔と変わってないなあ(顔も服装も)。
■3日目、コンペティション部門。今年のノミネート作品は10本。
■司会は今までで一番緊張しなかった。もう一人の司会者である柳沢茂樹氏とずいぶん楽しめた気がする。作品が上映されている間私たちは舞台裏の楽屋にずっと待機しているのですが、その間はあらかじめ見て来たノミネート作品について感想を述べ合ったり、くだらない話をしたり、「WBCの監督は実際のところ誰がいいのか」と議論しあったりと充実の時間であった。
■グランプリは今泉力哉監督の「微温(ぬるま)」、準グランプリは大森研一監督の「アタシの鍵は」、加藤行宏監督の「機械人間、11号」に決定しました。三本とも力作!おめでとうございます!
■コンペ終了後、ノミネート監督さんや出演者の方々、そして今回の審査員であった中村義洋監督とクロージングパーティでお話しする。若い人たちからも今映画界の第一線で大活躍されている中村さんからもたくさんのお話を聞かせていただき非常に勉強になったのだった。
■家で事前に見た10本の自主映画。見ながら自分に「映画とは」と問うたり、「演技とは」と問うたり、クオリティの高さに感心したり、「高すぎやしないか」と心配したり、分析したり、自分が大学時代に経験した映画製作の苦労を思い出したり、ただただ笑ったり、腹が立ったり、この時間自体が勉強であり豊かだなあと思う。私は得をしている。
■水戸、三泊。水戸のことはだいたいわかったつもりだ。嘘だけど。あ、水戸芸術館で開催されている「ジュリアン・オピー展」も見たんだった。シンプルだけど複雑に遊んでいる感じ。すごく面白かった。LED作品が中庭に展示されているが、その歩く人間の姿はいくら見ていても飽きないなあと思ったのでした。
摩訶不思議
- 2008/09/10
■先週田中智章監督とゆかいな仲間達でちょっとした乾杯。映画の話でえんえん4時間。皆映画をよく見ているなあと感心しました。「TOKYO!」のレオス・カラックス作品はどうだったのかとか、「ダーク・ナイト」へのそれぞれの思いとか、「ポニョ」はどこが素晴らしかったかな、あの某映画が最高につまらなかったなどそれぞれがぐだぐだ話し、話しているその人自身の姿をじっくり見られるのも含め、そんな時間を久しぶりに過ごしたなあという感じがして、面白かった。ちなみに「ポニョ」、私は波の上を走っているシーン(ポニョが「まことちゃん」にしか見えないシーン)が圧倒的に面白かったです。宮崎駿作品は大人になってから全て見ましたがどの映画にもいくつか存在する「理屈不要」シーンがいいなあと思う。理屈抜きであの海の上を走る構図は圧倒的でした。「魔女の宅急便」のオープニングでキキが空を飛ぶ瞬間とか、よくわかんないけど泣けるという原始的な感動に震えるという感じ。あとポニョの妹もよかった。ダイナミックでした。
■思想ももちろんそれぞれあるけれど、こう、何か理屈抜きで面白いというものに出会いたいと日々思っていますが、そういう点で昨日中上健次「化粧」を読んで、「ぶわわわわー!!!」と鳥肌が立つ瞬間がありました。語彙が足りなくて全然自分にも説明がつかないこの鳥肌は、きっと瞬く星だらけの夜空やどこまでも透き通っている海や、いきなり襲ってくるスコールのような雨に対峙した時の感覚に近いのかもしれません。
※※
■某アニメのアフレコ。最終的には歌まで唄う。プロの声優さん達の底力を見た!詳細は追って。
■某ドラマの撮影。専門職に従事している役。衣装で用意された白い制服を着ると何故かすこし気分が上がる。ふと三坂さんのことを思い出した。撮影はとても充実した時間だった。ロケバスの中から東京を眺める。重なる首都高速に、ビルまたビルビル。皇居周りは緑緑緑。見るもの全てが偏っているがそれはそれでバランスをとりつつ。本当に摩訶不思議な街だなあ、東京は。
■とあるレッスンを受けている。ゼロからのスタート。まず音符が読めない。昔は読めたのに。マイナスからのスタート。
■相撲問題ですよ。露鵬、白露山の人相の悪さが気になって気になって・・・。
夢/機関銃/ご飯
- 2008/09/04
■おさななじみからプレゼントをもらった。掃除機。非常にかっこいい、それでいて高性能。感謝。これで掃除好きになるかならないかは神のみぞ知る。
■その友人の本日の日記があまりにくだらなくて、笑った。元気になりました。そんな彼女が昨日見た夢は「いづみちゃんと一緒にものすごく美味しいお昼ご飯を食べる(何を食べているかは不明)」というものだったらしい。人の夢に出演できるのって嬉しいのは私だけでしょうか?ほっとするっていうか。
■NHK「SONGS」で薬師丸ひろ子が「WOMAN」「メインテーマ」「あなたを・もっと・しりたくて」等歌っていました。昔より今の薬師丸ひろ子の方が何倍も可愛いし素敵だなあと思いながら名曲を堪能。幸せな時間だった。松本隆の凄さを改めて感じ入りました。女も男もウジウジしている、そこが胸を打つ。
■今は、新しい家で、少しずつ自分の呼吸を整えておる時間なんだと気がつく。読書しつつ、ご飯作りつつ、自転車乗りつつ、その中で今自分の中に感じるずれを少しでも修正できれば。ゆっくりやれよゆっくりなと自分に言い聞かせつつ、やっぱり焦る時があり、もう染み付いた性格を捨てる訳にもいかず、そんなこんなでうまくつき合っていくしかないのでしょう。そうだ、今日は役者仕事の参考にとDVDを見たんだった。少しずつ。
ツケ
- 2008/09/03
■この何ヶ月かなんだかんだと忙しくしていたツケが一気に来る。すごく疲れてるんだ、きっと。気持ちを休めてもいいだろうかと誰にでもなく話しかけている。気持ちがね、自分のペースを取りもどそうとしても、追いつかない。ダメな状態。しっかりしなければいかんです。
■来週末はいよいよ水戸短編映像祭!私はまたもやコンペティション部門の司会をさせていただきます。今日最終候補作のDVDが水戸から送られてまいりました。少しずつ、じっくり見させていただきます。そして映画祭初日には冨永昌敬監督の最新作「シャーリーの転落人生」が上映されますよ。先日ちょっと見させていただいたんですけどね、これは大変面白い作品になっております。私は何だかもう大変な役をやっております。是非是非北関東在住の皆様。見てください。
■福田首相が辞めましたね。完全に疲れてますね、あの方。自虐的だし。それにしても次は麻生さんなんでしょうか。なんだかなあ。
体重計/悪夢/前
- 2008/08/29
■27日、久しぶりの晴れ間。宮沢さんのお見舞いに行く。笑うとまだ胸が痛むようだが術後は順調のようでほっとした。傷は痛々しいが、手術のおかげでこれから健康体になるのだか傷もありがたいものに見える。笑うと傷口が痛むのはわかっているはずだが、ついくだらない話で盛り上がり自ら痛みを誘発していた。まあ、私も悪いです。ゆっくりといろいろな話をする。寂しい話も。
■何度かお見舞いに行っているが、ここ最近は私が帰る時「じゃあ、計ったらどうだ」と宮沢さんは必ず面会室にある体重計を指差す。私も毎回「それだけはほんともうちょっと無理なんで」と行って病院を後にする。
※
■28日、某ドラマの撮影。朝早かったので休憩中にイスに座ったまま仮眠をとったら「突如顎がガクーンと外れる」夢を見た。しかも治ったと思ったらまたすぐ外れる、その繰り返し。さらにそこに「金縛り」の感覚がプラスされさながら超・悪夢。そして一番たちが悪いのは、あの「夢だが現実だかわからん感じ」。現実だと思って夢に対処しぐったりしてしまう、あの感じです。もう、本当に外れてると思ったからね、怖かった。疲れてるのかな。
■仕事が楽しい。ずっとこの仕事をしていられるようにしたい。へこたれずにいい仕事をしたい。この数日、そのことばかりを考えている。いい舞台とは何か、いい仕事は何か。来年の活動に繋がって行くように考えを止めないように。とにかく前にと思う。
■角田光代「八日目の蝉」読了。面白かったのですが「(好きな男の)子供が欲しい」という感情の書き方にちょっと違和感を感じるんだけど、どうなんだろ。皆女性は共感を持ってこの本を読み終えるのだろうか?
また会おう
- 2008/08/25
8月21日、世田谷区喜多見を離れる日がやって来た。
2年間しか住んでいないがとても愛着のある町だった。世田谷の端っこで駅前にも特ににぎわいは見られず「どこに住んでるの?」と質問され「喜多見です」と答えると「それどこ?東京?」と言われる率が非常に高い、この町。夜は静かだった。近くには野川が流れていて、白い鳥が川辺で水を飲んでいる。喜多見側から成城学園前に行くにはものすごく急で長い坂を登らなければいけなくて、私はその坂を密かに「セレブへの大きな壁」と呼んでいた。坂を登った瞬間から豪邸豪邸また豪邸なのだ。喜多見は成城の横でいつも静かに佇んでいる。
前の日、隣に住んでいるMさんに挨拶に行った。
Mさんは以前ここの日記にも書いたことがあるが、石井苗子に似た美しいおばさんである。猫が大好きで私が喜多見に引っ越してくる前には3匹飼っていたというが、全て見送り、今はもう育てる体力がないので「町の猫おばさん」になり野良猫に愛情を注いでいるということだった。
テーオが脱走し一週間帰ってこなかった時に、Mさんは一緒に探してくれた。稽古で帰りが夜の10時以降になり、探す時間がなかなか取れず焦っていた私に「絶対に見つかるわよ」と言葉をかけてくれた。夜中の3時に探しに行こうと家を出るとMさんは外に出ていてテーオの名前を呼んでくれていた。そんな時間に・・・と思い頭を下げたが本当に嬉しかった。
隣人とこんなに深くおつき合いしたのは初めてだった。植木鉢を頂いたり、作ってくれた料理をおすそ分けしていただいたり、芝居でくたくたになっている私を見て励ましてくれたり、2人で長々と世間話をしたり、相談をしたり、思い出を披露した。Mさんの飼っていた猫たちの話やアメリカにいる娘さんの話はとても面白かった。Mさんは母よりも年上だけど、私たちはいいお友達のようにお付き合いしていたのだと思う。
インターフォンを押して、出て来たMさんとお話ししている時に、私は冷蔵庫に私が以前渡した舞台のチラシが貼ってあることに気がついた。見に来て欲しいとかそういうことではなく「こんなことやってるんだよ」と教える為に渡した1枚のチラシはアデューの第一回公演のものである。大事に貼っておいてくれたんだと嬉しかった。
感謝の気持ちを込めて手紙を書いて渡したが、Mさんからは私が書いたより何倍も長い手紙と、「マティス」と「ロートレック」の画集などをいただいた。
そして引っ越し当日、「新しい家で食べてね」と茹でたトウモロコシをいただいた。
トウモロコシが入ったその紙袋には保冷剤まできちんと入っている。今度こそ涙が出た。ずっと丁寧に接してくれたMさんに甘えて、この2年間猫達と生きることができたのだと思うと何というか本当にいろんな気持ちがだだもれてきてしまったのだ。それでも「ここで生活できて本当によかったです」と何とか伝えることが出来た。
引っ越しを手伝いに来てくれていた私の母は、その光景を見て、何というか、ぼんやりしていた。私と母よりも年上のMさんがなんやかんや言いながら泣いているのを見て、不思議な気持ちになったんだと思います。
※※
中学1年の時千葉県柏市から東京の田端に引っ越した時は友達や思い出と別れるのがとてもつらくて引っ越しの日に大泣きしたことを今でもよく覚えている。父の運転するカローラから見える町の姿を絶対目に焼きつけておこうと子供心に思ったものだ。
引っ越しでこんなにも寂しい思いをするのはあの時以来だ。
人生において13回目の引っ越しかあ。まだまだ流浪は続くのかしら。
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